東京経済大学 大学案内2024
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まこと   考えたことのない問題に直面したり、尊敬できる先輩と同じテーマで語学 長り合うという時間は、学生時代ならではの経験です。そこで自分と人とを比較したり、新しい考え方を知ることで、本の読み方や授業に臨む態度も変わってきます。詩人の大岡 信さんの言葉に「うたげと孤心」という言葉があります。「うたげ」とはさまざまな人と触れ合い、語り合うこと、「孤心」とは一人で深く学ぶことを指しているのですが、私は学問にも「うたげと孤心」が大切だと思っています。その両方があって、自分の考えが磨かれていくのです。   私は、学長が発足された研究会にも参加し、とても感銘を受けました。特有 山に「都市」をテーマにした研究報告は、都市と経済、人との関わりを考えるきっかけとなり興味深かったです。   「うたげ(研究会)」に参加することで、自分が興味の持てるテーマに出会学 長うことも大切です。新しいテーマやさまざまな人や発見に出会える場。それが「うたげ」だと思います。   東経大のキャッチフレーズは「考え抜く実学。」です。私は学長ゼミを、その実践学 長の場にしたいと考えていますが、皆さんは実学とはどのようなものだと思いますか?   辞書を引くと、実用的な学びとありますが、私は実社会で役立つ実践知有 山だと思っています。これからの社会や日々の暮らしの問題を解決する学問ではないでしょうか。   世の中で言われている実学というのは、目の前にある問題を解決するた矢 野めのノウハウのように感じてしまいます。それはそれで大切ですが、加えて大切なのは、問題を解決したあと、同じ問題を引き起こさないためにどうしたらいいか、次に問題が起きたとき、以前の解決法をどう活用していくか、ということを継続的に考え続けることが必要だと思います。その「考え続けるためのモーター」のようなものが実学ではないでしょうか。   世の中の問題というのは、簡単に学 長正解にたどり着けるものではありません。さまざまな思いの人がいて、それぞれの立場や歴史的な事情もあり、意見が対立することもしばしばです。2022年から始まったロシアのウクライナ侵攻はその代表的な例でしょう。しかし大切なのは、プロセスです。お互いの思いを語り合う対話を通して考え続ける。正解は見つけられないかもしれませんが、対話をし、考え続けることで、少なくとも相手の考えは理解できるのではないでしょうか。それは社会の問題を解決するためだけでなく、日々の生活においても自己と他者との間の関係を築くために必要なことです。   プロセスが大事というのは、私も実感しています。意見が異なったとき、矢 野自分の意見が正しいと思い込むことは、選択肢を捨てることになり、せっかく広がりかけた視野を狭めることになってしまいます。相手の意見を尊重し、意見を融合することで、より良い関係がつくれるのだと思います。   私は、その対話のために、もっともっと学んでいかなくてはならないと感有 山じています。そして大学を卒業した後も、学びを続けていきたいと思います。   学びは少しずつでもかまいません。私は大学の4年間で、一生考え続け、学 長学び続ける姿勢を身につけてほしいと考えています。自分たちが暮らしている社会をより良いものにするにはどうしたらいいか。自分たちはどう生きれば充実した人生を送れるか。さきほど矢野さんは、「考え続けるモーター」に例えてくれましたが、「考え抜く実学。」とはまさに、こうした課題を追い求めるためのモーターになると思います。そしてそれこそが、「真」の実学なのです。岡本英男学長が2019年度から主催している有志学生のための課外学習です。正課授業として開講しているゼミ(演習)とは異なり、卒業単位として認定されることはありませんが、毎年度10名程度の学生が放課後に集い、意見を交わしています。実学は考え続けるためのモーター学長ゼミとは?003大切なのは正解ではなく、対話をし、考え続けること真実を追い求めるチカラ

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