MESSAGE FROM THE PRESIDENT031文学部教授。2021年4月、立教大学第22代総長に就任。専門はアングリカニズム、エキュメニズム、組織神学、現代神学。教大学の歴史は、米国聖公会の宣教師チャニング・ムーア・ウィリアムズが1874年に創立した「立教学校」から始まります。キリスト教が厳しく弾圧されていた時代に聖書と英学を教える私塾を開くのは、計り知れない苦闘があったことでしょう。それでもウィリアムズは教え伝えること自体が自分の使命だと確信し、需要のない中でも教育を行う道を選択しました。145年以上を経た現在においても、その姿勢は失われていません。立教大学は世間のニーズに応える形で教育を展開するのではなく、「普遍的真理を探究し、この世界や社会のために働く者を生み育てる」というミッションのもと、人類が築き上げてきた知の体系とそれらを社会に還元していく力をもつ人を育む場として存在しているのです。 本学の教育方針の基軸であるリベラルアーツは、単なる教養教育などではありません。人類が長い歴史の中で探究してきたいまだ到達し得ない理想――それを追い続けることの価値を提示する、いわば「夢を語り、ビジョンを抱かせる」教育です。西洋の伝統を受け継いだ、本物のリベラルアーツ教育の実践のためには、立教大学はある意味で「危険な場」になる必要があると考えています。批判すること・されることを恐れず、真理とは何かを問い続ける。常識や定説、権威を疑い、相対化させる。オリジナルの現象や原文にあたり確かめる。時には自らの考えが真っ向から否定されることもあるかもしれません。しかし臆せずに自己を再構築し、世界を読み解き変化をもたらす力を育んでほしいと思います。 立教大学は今後、自身のルーツといま一度向き合い、建学の精神や教育理念が反映された特色ある取り組みの強化を図ります。導入期教育の充実化、リーダーシップ教育、グローバル教育、データサイエンス教育の全学展開、サービスラーニングをはじめとする社会連携教育の活性化などを柱に改革を進め、真理を味わう場としての環境を整えたいと考えています。 新型コロナウイルス感染症の流行は、人々の心に影を落としました。このような状況下だからこそ、大きな困難の中にある世界を顧み、未来に思いを馳せてください。学生のみなさんが、立教大学での学びをとおして新たな世界を構想できる人になることを心から願っています。西原 廉太NISHIHARA RENTA立
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