東京農工大学 大学案内 2024
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SHINMURA, Tsuyoshi04Biotechnology応用化学科 准教授兼橋真二KANEHASHI, ShinjiGreenChemistry05生物生産学科 教授新村毅 上が「喜びのピヨ」、下が「悲しみのピヨ」の音声分析画像。波形が明らかに異なるのがわかる共同研究をしている養鶏場研究室で飼育している母ニワトリと雛ICHISHIMA, Kanako東京都立八王子東高等学校出身カシューナッツの殻からつくった機能性バイオマスプラスチックカシューナッツの殻(右)と精製した植物油(左)大学院生物システム応用科学府生物機能システム科学専攻博士前期課程2年伊藤芹華ITO,Serika群馬県立高崎女子高等学校出身大学院農学府農学専攻生物生産科学コース修士課程1年生物学と工学が融合した研究分野。植物の遺伝子組み換えから創薬の基礎研究、人工臓器の開発まで研究テーマは幅広い。東京農工大学では、農学部・工学部の共同研究も盛んだ。近年、家畜を飼育する上で「アニマルウェルフェア」に即した管理をすることが求められています。これはいわば「家畜への福祉」で、より快適な環境下で飼育することにより、ストレスや疾病のリスクを減らす取り組みです。現在は、研究室のACIのシステムを用いて、ニワトリと雛の母子間で行われる音声コミュニケーションを再現し、雛をより福祉的な環境で飼育する方法を研究しています。母ニワトリの音声は、雛の成長に好影響をもたらすことが示唆されており、これを情報工学的に活用することを目指しています。実験では、研究室で飼育する雛の音声を録音し、これをAIで解析し、コンピュータで再現するシステムを開発中です。日本は欧米に比べ、アニマルウェルフェアの意識が低いことが指摘されています。将来は企業の研究職に就いて、「動物との会話」に関する研究を続けながら、アニマルウェルフェアについて多くの人が考える機会をつくっていきたいと思っています。環境にやさしい化学のこと。生物由来のバイオマスプラスチックの開発、廃棄物を出さない化学合成の工程開発など、環境に配慮した化学で、持続可能な地球環境を実現する研究分野。「環境にやさしい素材の開発」という研究テーマに惹かれ、現在の研究室を選びました。研究テーマとして、カシューナッツの殻から得られる植物油と木材や綿花から得られるセルロースを組み合わせた素材の開発に挑んでいます。これは強靭なセルロースの構造に、天然植物油が有する抗菌性、耐熱性、紫外線吸収性、しなやかさといった機能の付与を目的にしています。この植物油をさまざまな材料と組み合わせることで、これまでにない多くの驚きと発見があります。成功すれば、新しい材料の開発につながる点がこの研究の大きなやりがいだと思います。 「脱プラ」といっても本当にプラスチックをなくすことは困難です。そこで、現在使用されている石油資源由来の材料を再生可能資源由来に置き換えていくことがスマートな解決策だと考えます。将来は、人々の生活の豊かさと地球環境の保全を両立させることができる材料の開発に携わっていきたいです。市嶋可奈子 「アニマルウェルフェア」を意識したニワトリの飼育システムを開発中カシューナッツの殻から得た植物油とセルロースを足し合わせた材料を開発バイオテクノロジーグリーンケミストリー畜産学研究室(システム行動生物学研究グループ)「動物と会話するシステム」を開発し、家畜の飼育環境改善に役立てる動物との会話を実現する研究に取り組んでいます。コンピュータを介して、動物の心を理解し、こちらから話しかけることもできる「アニマル・コンピュータ・インタラクション(ACI)」のシステムを構築しています。実験では、研究室で飼育しているニワトリの雛の音声をAI(人工知能)のディープラーニングを使って分析し、その意味を抽出します。ここから、ニワトリと雛は、音声によって母子間コミュニケーションを行っていることが明らかになりました。母ニワトリの声を聞いた雛は「喜びのピヨ」、母ニワトリと引き離された雛は「悲しみのピヨ」に当たる鳴き方をしていたのです。2つの「ピヨ」の音源データを可視化すると明らかに違う波形を示し、ここから雛にも感情がある可能性が見えてきました。現在は、独自開発したACIの社会実装を見据えて、企業との共同研究も積極的に行っており、実際に家畜の飼育を行う農場レベルでの試験も進めています。動物の情動を理解して、さらに制御するACIのコンセプトや技術を家畜に限らずさまざまな動物に適用していくことで、人と動物が共生する"One Welfare"の実現を目指しています。兼橋研究室(サステナブルマテリアル研究グループ)生物由来の未利用廃棄物資源からユニークなバイオマスプラスチックをつくり出す生物由来の未利用廃棄物資源から新しいバイオマスプラスチックを開発する研究を行っています。バイオマスとは「生物由来の資源」を指すもので、中でも未利用な廃棄物から得られる再生可能資源を原料とするカーボンニュートラルな材料開発につながる研究です。バイオマスの有効利用は、枯渇する化石資源の代替としてだけでなく、環境にやさしい素材をつくるイノベーションとして注目されています。現在、カシューナッツの殻に含まれる天然の植物油から新しい素材を開発する研究を行っています。この素材には、やわらかいことに加え、抗菌性、耐熱性、紫外線吸収性などの優れた機能があり、その実用化が期待されます。これまでの民間企業や海外の大学での経験を活かし、海外機関との交流や社会実装に向けた国際展開にも積極的に取り組んでいます。さらに、研究室では、グローバルに活躍できる研究者の育成にも力を入れています。新しいバイオマスプラスチックの基礎研究から社会実装を見据えた研究開発を通し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

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