東京農工大学 大学案内 2024
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KOIKE, Shinsuke02Smart Mobility03地域生態システム学科 教授小池伸介 機械システム工学科 教授ポンサトーン ラクシンチャラーンサク 大学院工学府機械システム工学専攻博士前期課程1年新井乃理花 東京農工大学には、実にさまざまなテーマの研究室があり、日々最先端の研究が行われている。農学部・工学部の注目研究室をピックアップ!ツキノワグマの生体捕獲。生態を明らかにするための重要な作業だツキノワグマに装着する行動観察用の首輪型カメラ駆除されたシカを運び、森林に設置したカメラで観察する大学院連合農学研究科環境資源共生科学専攻博士課程3年稲垣亜希乃INAGAKI, Akino私立横浜雙葉高等学校出身さまざまなセンサーを搭載した運転支援開発用実験車実験室に設置された協調運転開発用ドライビングシミュレータARAI, Norika東京都立南多摩中等教育学校出身微生物から植物、大型動物までのさまざまな生き物がお互いにつながり合いながら生きていること。生物多様性の保全、健全な生態系の維持という社会的な目標に寄与しうる多様な研究テーマが進められている。腐肉食動物の研究をしています。動物の死体を食べる動物を指すもので、英語ではスカベンジャーと呼ばれています。具体的には、ハゲワシなどの死体漁りに特化した動物がいない日本の森林で、シカの死体をどのような動物がどれくらい食べていて、その消失過程が生態系でどのような役割を果たしているかを調べています。フィールドワーク先の栃木県日光市の森林では、地元ハンターと協力して、有害個体として駆除されたシカの死体を許可された場所に運び、カメラで定点観測します。期間は1週間から1か月。そこで野生のツキノワグマ、タヌキ、イノシシなどが、シカの死体を食べる様子が観察できました。このデータを基に、動物死体の生態系における役割を詳しく調べていきます。これは「死肉生態学」と呼ばれる研究分野になります。博士課程在籍中にアメリカ留学も経験する予定です。さらに幅広い知識を吸収して、野生動物が暮らす場所の多様性を知り、守ることに貢献したいと思っています。自動車の安全運転支援システムや電動化技術等、私たちの生活を豊かにする移動の自由を支える最新のテクノロジー。交通事故・エネルギー、さまざまな社会課題の解決を目指した先端モビリティ研究が進められている。Pongsathorn RAKSINCHAROENSAK最近の自動車には、前方を走る車両に合わせて自動的に速度や車間距離を調整する機能や車線をはみ出さないように支援する機能が搭載されています。しかし、そうした運転支援システムを使用すると、運転者は過信によって度々、前方への注意を切らせてしまうことがあります。通常であれば事故の発生につながるような行動ですが、市場データによると事故は減っている─。このメカニズムを学術的に解明することで、運転支援システムの効果を細かく知り、今後のよりよいシステム開発につなげたいと考えています。研究はドライビングシミュレータを使って行います。シミュレータ内に高速道路を模したルートを再現し、被験者はその道を走行。被験者には視線行動を計測できるウェアラブルグラスを装着してもらい、支援システムのON・OFFによってどういった反応が起こるか検証しています。シミュレータがうまく作動した際や想定した結果が得られたときの感動が研究の原動力。誰もが運転を楽しめるような技術を開発したいです!生物多様性Biodiversityシカの死体が消失する過程を定点観測生態系での役割を科学的に解明するドライビングシミュレータを用いて運転支援システムの効果を検証するさまざまな生物の観察データから生き物同士のつながりを科学する研究テーマは、森林の豊かな生物多様性がどのように保たれているのか、そのメカニズムを解明することです。生態系の仕組みを知ることは、生物多様性を保全し、生態系を保全・管理していく上で大切な研究テーマです。現在、メインで取り組んでいる研究テーマの一つは、ツキノワグマの研究です。20年間に渡る長期野外研究プロジェクトを進めており、これまで100頭以上の生体捕獲を行い、GPSによる行動追跡、遺伝解析などを行いました。個体ベースの長期データは世界的にも貴重なもので、ツキノワグマの生活史や生態系での役割などを科学的に明らかにすることで、ツキノワグマの生息地を保全するとともに、人間との軋轢を少しでも減らすことに貢献できると考えています。気候変動が深刻化する現在の地球において、人類は自然資源を持続的に利用しつつ、健全な生態系を維持する視点が求められます。そのためにも私たちは生態系での複雑な生き物同士のつながりを詳しく調べ、次世代に伝えていく必要があります。これからも森と会話するという感覚を大切に、生物多様性の保全に寄与する研究を続けていきます。事故につながる状況をデータ解析し、リスク回避の運転支援システムを開発する自動車による交通事故を未然に防ぐための「運転支援システム」を開発しています。研究の特色は、世界的にも類を見ないほどのビッグデータを持っていることです。全国5拠点のタクシー会社に18年間、協力してもらい、タクシーに取り付けられたドライブレコーダーに残る映像から「事故リスクのある状況や場所」をデータとして蓄積しています。時間帯や天候、道路環境など、事故が起きた/起きそうになった際の周辺状況やドライバーの反応を細かく分類し、そのデータに沿ってリスクを予測することで事故を回避するのです。この研究は、AI(人工知能)の機械学習を用いたデータ解析に加え、センシングによる車両周辺環境の認識、自動車のハンドルやブレーキを自動制御する技術など、工学のさまざまなテクノロジーが集積しています。社会的にも注目度が高く、自動車メーカーとの共同研究も盛んな分野。人間と機械が協調した運転支援システムを開発することで、交通事故ゼロ社会の実現に貢献することが目標です。スマートモビリティ研究拠点ポンサトーン研究室スマートモビリティ森林生物保全学研究室REPORT先端研究の現場

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