社会学部/メディア社会学科メディア社会学専門ゼミ1・2公園のベンチでくつろいだり、おしゃれなカフェでケーキの横に座っていたり。クマや犬、キャラクターのぬいぐるみが、まるで普通に生活しているようにSNSのなかに□れています。ぬいぐるみを主役にして写真を楽しむ「ぬい撮り」は、SNSの普及とともによく見られる景色になっています。旅行に行きたくても行けない人からぬいぐるみを預かり、本人に代わって「ぬい撮り」した写真を送るというビジネスが成立してしまうほどで す。果 たしてこの 現 象 は世 界 共 通なのか、興 味 を 持 っ た 学 生 が 日 本 と 諸 外 国 のInstagramを比較してみました。すると、日本人の方 が ぬ いぐるみを生きているか のように扱い、自分の家族としてだけでなく、自分の分身として登場させていることがわかりました。スマホとSNSの急速な普及でコミュニケーションの方法は大きく変わりました。とはいえ、根底にある価値観はそう簡単に変わりません。日本「文化・ソーシャルネットワークに関する社会心理学的研究」東京大学大学院人文社会系研究科社会文化研究専攻社会心理学専門分野博士課程修了。東京女子大学特任講師、東京大学大学院助教などを経て2017年より現職。専門は社会心理学、社会ネットワーク分析、比較文化研究。ではSNS上で素顔を晒 すことに抵抗を感じる人 が 大 多 数 で す。ぬ いぐる み は い わ ば アバター。自分の代わりにぬいぐるみを写真に登場させることで、日常や旅先の経験を積極的に世の中にシェアできるのでしょう。社 会 心 理 学は、世の中 一 般の人々がさまざまな状況に影響されながら考え、行動していることがらを、データで検証し、分析する学問です。仮 説を立て、実 験、観 察、アンケート調 査などを実施し、データに基づいて検証します。書籍や 雑誌、TV番組やCMなどの文化的産物を内容分析する場合もあります。たとえば雑誌広告のキャッチフレーズから、日本は「今年の流行はこの 色」と同 調を促 す のに対し、アメリカでは「この色で差をつけろ!」と違いを強調する、といった比較をする方法です。ゼミでは3年次に理論やさまざまな実証方法、データ分析の方法を学 びながら、それぞれ の研 究 関 心を温め、4年 次で卒 業 論 文を仕 上 げます。テーマは身近な関心から決まることが多く、人間関係のあり方、SNS上のコミュニケーション、見知らぬ他者との相互作用、アニメや映画、歌詞の内容、ファンコミュニティ、推し活などさまざまです。ただし、そのテーマが果たして研究に値するものなのか、社会的、学問的にどのような意義があるのかを時間をかけて議論します。こうした一連の過程で世の中を広く分 析 的な視 点で 見る力 や、それを検 証できる力を身につけることをめざします。針原 素子 准教授075 SNSの楽しみ方で知る日本人の考え方「当たり前」に疑問を持ち検証する力を養うゼミの学び「ぬい撮り」するのは日本人だけ?身近な疑問を研究テーマに
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