杏林大学 GUIDEBOOK 2026
49/56

 20年にわたって心臓手術の麻酔に携わる中澤さんは、「麻酔科医の仕事は、単に手術の際に患者さんを眠らせることではありません。手術の進行にあわせて、麻酔薬や鎮痛薬の量を調整したり、心臓の動きを助ける薬を使用したり、呼吸のサポートをしたりと多岐にわたります」と話す。急な出血や心筋梗塞、喘息発作などの合併症が起きた際には、治療も行うなど幅広い知識と素早い判断力が、患者の命を左右するといいます。  とくに心臓手術は数ある手術のなかでもっとも難度が高い手術のひとつ。最善を尽くしてもすべての患者さんが助かるわけではなく、手術後に意識が戻ることなく亡くなってしまう方もいるのが現実。「『手術が終わったら声をかけて起こしますからね』といって全身麻酔を導入します。患者さんは、私にすべてを任せて眠りについていくので、助けることができなかった際はいつも自分自身の無力さに打ちひしがれます」という。「彼らの命を無駄にしないためには、私自身が常に学び、成長し、そして目の前の手術患者の安全を守ることしかないと考えています。医師は、常に学び続けなくてはいけない大変さはありますが、一生を捧げる価値のある仕事だと思います」 消化器外科医として胃がんなどの消化器疾患を専門に診察や治療を行う大木さん。腹腔鏡手術やロボット支援下手術なども行うため、常に知識のアップデートは欠かせない。「手術前の検査から退院後の外来診察まで担当する仕事は多く、楽ではありませんが、それに勝る喜びが医師の仕事にはあります。食べることは生きること。食事がとれなかった患者さんが、術後に口から食事をとれるようになると、消化器外科医になってよかったと心から思います」 出産後、育児と仕事のバランスに悩む時期があったという大木さん。その時、先輩医師から「子どもはいつか巣立つ。その時に自分が何をしていたいかが大切」と声をかけられた。「子どものために仕事をセーブするか否かで悩んでいた私はハッとしました。『私はやっぱり消化器外科医でいたい』とはっきり自覚しました」と振り返る。大変な場面に遭遇するたび、自身の努力とともに周囲に支えられ、育児と仕事のバランスをしなやかに変えながら、臨床と研究を継続。「いまでは息子も高校生になり、私の仕事を応援してくれています。医師は生涯にわたり学び続け、成長できる素晴らしい仕事です。杏林大学で一緒に学びましょう」一生を捧げる価値ある職業生涯にわたり学び成長できる仕事杏林大学医学部麻酔科学教室 教授中澤春政さん 医学部医学科 2004年卒業GUIDEBOOK 202647FACULTY OF MEDICINE杏林大学医学部消化器・一般外科学教室 講師大木亜津子さん 医学部医学科 1998年卒業卒業生が選んだ道CAREER PATHS

元のページ  ../index.html#49

このブックを見る