専門学校 桑沢デザイン研究所 GUIDEBOOK
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離■■■制作意図自分のイラスト作品を展示する個展を想定し制作しました。将来ブックデザインに携わりたいと考えているため、海外の絵本のような雰囲気を目指しました。「HARAPPA!」という展示名には、近所の原っぱに遊びに行くような気持ちで誰でも気軽に立ち寄ってほしい、遊び場のような楽しくおおらかな雰囲気の展示にしたい、という意図を込めました。原っぱは用途が限定されていない、誰でも好きに出入りができる自由な空間です。普段は接点がない様々な人が偶然一つの場所に集まり同じ時間を過ごす、という原っぱの性質に合わせ、展示するイラストにもテーマを設けず、これまで私が描いてきたものを自由に展示する予定です。広々とした草原を強調するために展示名や展示情報は下の方にまとめて配置しました。また緑色を引き立てるために差し色は補色の赤と隣接色の黄色のみを用い、それ以外は白と黒でまとめることを意識しました。作品評価犬のイラストが可愛くて躍動感もあり、思い切って大きなスペースをイラストに割いて、情報を画面下にキュッとまとめたレイアウトも上手です。芝生に埋まった文字や骨、ボールのバランスもよく、ボールの黄色と首輪の赤も効いています。「すきなもの、のびのびあつめて」は既存のフォントでかっちり仕上げたかった意図はわかるのですが、イラストが上手な方のなので、文字も思い切ってイラストの一部として手書きで仕上げるとより「のびのび」感とオリジナリティーが出たと思います。制作意図私は日本のお祭りや郷土芸能が好きで、もっと多くの人にも知ってもらいたいという思いから「獅子舞版画展」を企画しました。この展示は、日本各地の獅子舞をイラストレーションにしてシルクスクリーン版画で展示を行う、私の個展になります。獅子舞は縁起物なので、開催時期を新年にしました。ポスターを見た際に、まず獅子舞のイラストレーションに目が行くように、シンプルでインパクトのある作品を使用しました。そして獅子舞の激しくダイナミックな動きをイメージして、文字を大きく、跳ねているような動きを付けました。海外の方にも興味を持ってもらえるように、上下に英字を入れ、版画のズレや重なりをイメージして、英字の透明度を上げることで表現しています。郷土芸能の素朴な中にある強さと、獅子舞のひょうきんで愛らしい要素を伝えられるポスターになるように制作しました。作品評価獅子舞のイラストが強く、印象的なポスターです。色の組み合わせも強く、目を惹く作品に仕上がっています。周りの余白のアンバランスさも素敵なので、伝統的なモチーフでもモダンな作品に仕上がっています。上下の欧文「SHI SHI MAI」「HANGA」について、透明度を上げただけでは他の要素とバランスや躍動感が合っていないのが残念です。木版画のテクスチャーや、多色刷りで版ズレしたような仕上げを使ったり、各文字の位置を動かすことで「ひょうきんで愛らしい」要素を欧文の文字にも加えると、より魅力的な作品になると思います。制作意図今回私は、自分のエッセイをまとめた本の出版パーティーのポスターを制作した。日々のままならさやとりとめもない考えをまとめた文章が多いことから、本の題面は『目も当てられない日常』という。本自体のデザインをする時、題名にもある“目も当てられなさ”を、写真および題名を赤と青に乖させることで、焦点のあっていない雰囲気をつくり、表現している。今回のポスターで、全体に配置してあるグラフィックに赤と青という色を選択したのも、上記と同じ理由だ。また、中央に配置した■つの本自体をあえてモノクロにすることにより、全体にバラけさせたグラフィックとの対比を狙っている。グラフィックについても、赤の部分は「目も当てら」、青の部分は「れない日常」という文字をかなり崩して配置している。一見文字とは思えないがじっくり見ると読める、という部分でも“目も当てられなさ”を表現している。作品評価テーマとそのコンセプトからは、ユニークな視点が感じられて面白くなりそうな期待感を抱かせます。あえて要素も多くして混沌としたイメージを狙い、それをまとめるために色数を絞ったアプローチもよいと思います。その反面、画面構成に関しては、シンメトリーに近い配置となっているので、テーマの割にはやや硬い印象となり、その分ユニークな視点が弱く感じられるため、もう少し大胆にシンメトリーを崩した構成を狙ってみてもよかったと思います。制作意図多種多様である「雨の顔」は人間の心の風景そのもののように感じ、雨模様の写真とメッセージボードを揃えた写真展を考えました。メッセージボードには小雨であれば「穏やかな心」、時雨であれば「忙しない日常」、白雨であれば「幸運の前触れ」といったようにそれぞれの雨模様に象徴的な心情をあて、言葉として表します。この写真展では足を運んでくれた方にとっての雨言葉を考えていただきたいので、メッセージボードに記す言葉はすべて私の主観的な感情に寄せたものになっています。写真展のポスターは、タイトルを作字することで「雨言葉」というフレーズを印象付けるよう意識し、写真とイラストで雨に関する展覧会であることを一目でわかるよう工夫しています。またグループの配置と余白をはっきりさせることで視線誘導をし、一部をメインビジュアルに重ねることで遠近感を演出しています。作品評価写真のヌケ感のよさや、展覧会のタイトルロゴ、キャッチコピーなど全体的にクオリティの高い作品となっています。このような世界観が好きな人は多いので、ファンもつきそうなポスターです。しいて言えば、優先順位の低い文字情報などはもっと小さくしてみたりして、メリハリを出すともっとよくなります。制作意図映画館で映画を観るとき、観客は何を観ているのか。通常、まずスクリーンを、次に映像に映し出されている人やものを観ますが、「映画を観る」という行為自体が当たり前になっている現代の私たちにとって、そうした視線は意識の外側にあると言えるでしょう。目には見えない、意識もしてもいない、透明な視線は、日常のあらゆる瞬間で絶え間なく交差しているのではないでしょうか。「不透明な視線」は視線を可視化するというテーマの展示会です。透明と不透明を使い分けることで、「可視」と「不可視」の間を行き来するようなデザインを目指しました。写真は私が撮影した母で、上からいくつもの半透明の四角を重ね、その上にブラインドカーテンの隙間から見えるようなイメージで横線を入れています。視線を可視化することで見えてくる不思議な世界を楽しんでもらえたらという気持ちを込めて制作しました。作品評価実験的なビジュアル表現で非常に楽しく見られるポスターです。一つのイメージに近づくための適切な画像処理やサブ要素の罫線の使い方など、計算された構成で感心します。テーマを可視化できたと言えるでしょう。ただ、少しインパクトの無さや弱さもあるので、写真の色の濃さやタイトルの入れ方など、もう少し強く見える心配りがあってもいいでしょう。284285

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