桑沢デザイン研究所 第12代所長桑沢デザイン研究所は、■■■■年で創立■■周年の節目を迎えます。改めて、〈桑沢〉が創立当時から大きな影響を受けたバウハウスのカリキュラム図(■■■■年の同校入学案内に掲載)を眺めてみましょう。同心円がいくつも重なる図は、外側から内側に向かって基礎の共有専門分化専門性の統合という順序でデザインを学んでゆくことを示しています。まずは造形的な感覚を開発し、次に風土や文化に対する見識を身につけた後に、生産技術を学んでプロフェッショナルを目指すのです。ここで重要なのは、さらに内側にある中心部分に建築が据えられていることです。これは単に建物をデザインするということではなく、多様な専門性を持ったプロフェッショナルたちが協力して、「生活環境の形成」といった総合的な課題に取り組むことを意味していると考えられます。たとえば、建物の形状の設計だけではなく、キッチンやバス、壁紙や敷物などの装飾、家具や道具類などなど、きわめて多様なものがデザインされなければなりません。そのときに初めて、各分野の専門家がそれぞれに「デザインの基礎を共有している」ということが生きてくるわけです。カリキュラム図に込められたバウハウスの佐藤竜平教育理念を振り返ったうえで、今、私たちが考えるべきことは二つあるように感じています。一つは、先の例で見たようにデザインの専門性は互いに連続しているということです。一つの物やサービスをつくろうとしても、一人の専門家の仕事では完結することはなく、実に多様な専門性が連携しなければなりません。そしてもう一つは、社会から求められる専門性は時代とともに移り変わるということです。一つの専門性を支えるコア・スキルも、他の専門性との境界も、実は流動的に変化するのです。むしろ、異なる専門性が交わる「中間領域」でこそ、面白いものが生まれてくる可能性は高いのです。ところが、ともすると特定の専門性にこだわりすぎて、新しい技術の可能性に気づけなかったり、当事者として取り組むべき社会課題から距離をとってしまったりということが起こります。今、デザインを教える私たち自身が、既成概念を捨てて柔軟な思考を備え、新しい可能性に向けて手探りを始めるべきだと感じています。基礎造形、デザイン学、ビジュアルデザイン、プロダクトデザイン、スペースデザイン、ファッションデザインというふうにタテヨコに走る組織の垣根をできるだけ低くして、さまざまな社会課題の解決や文化の醸成のために協力しあえる人材育成を目指します。バウハウスの教育システム構造図所長あいさつデザインの基礎を共有し多様な専門性で社会の課題に向き合う104105
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