分子分光学とは、分子からの光を色(波長)で分けて得られるスペクトルを分析する学問です。スペクトルは、分子の種類や構造、周囲の環境を鋭敏に反映し、私たちが分子の姿を間接的に捉える手掛かりとなるため、「分子からの手紙」とも呼ばれます。その「手紙」を読み解いてスペクトルを分析することにより、どの分子が、いつ、どこに、どれだけの量、どのような状態で存在するかを調べられます。我々の研究室ではこれをさらに発展させ、分子同士の相互作用や熱といった情報までも複合的に読み解き、マイクロスケールの空間で何が起きているのかを調べる新しい分光分析法を開発しています。 研究内容:以下の3つをキーワードにして研究を行っています。 ○分子間相互作用:分子同士にはたらく共有結合よりも弱い相互作用は、液体や固体の構造、溶液の物性に本質的な役割を果たします。これらの相互作用に基づく分子集団の運動を反映するスペクトルは、「相の指紋」として有用です。例えば融解過程のスペクトルを追跡することで、結晶構造が消失するダイナミクスが分かります。 ○ 分光温度:スペクトルを精密に調べ、分子振動の熱分布を知ることで、温度を分光学的に決定できます。数μmのレーザー照射点を分析することにより、微小空間の温度を分子の状態とともに複合的に測定できます。そのような分析を冷却水について行うことで、温度変化の異なるスペクトル成分、とくに密度極大の原因となる成分を調べることができます(右図)。 ○ フローイメージング:マイクロスケールの反応デバイスを顕微鏡下で分光分析することにより、混合や加熱・冷却による、反応分子の状態変化をiinn ssiittuu(その場)分析できます。流れの上流・下流を空間分解測定し、時々刻々の変化を解き明かします。 受験生のみなさんへ:分子分光学は「化学の眼」としての役割を担います。私たちが光でものを見るように、分光学では光を使って分子を観ます。例えば反応フラスコの中で分子がどのように変化するかを、(蓋を開けなくても)光を当てて調べることができます。「物理」を原理にした分析装置を駆使して、「化学」あるいは「生物」に関わる新しい現象を解き明かす、高校で習う理系科目の知識を総動員した研究を楽しむことができます。 メインナノ、マイクロ関連レーザー/物性66分子分光学研究室 応用化学科 微 小 空 間 の 分 子 ス ペ ク ト ル を 読 み 解 く 、 新 し い 局 所 分 光 分 析 の 開 発 微小空間の分子スペクトルを読み解く、新しい局所分光分析の開発 岡島 元 准教授 分子分光学研究室応用化学科岡島 元准教授
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