中央大学 理工学部研究室ガイド 2023
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空空間間情情報報技技術術研研究究室室 鳥鳥海海 重重喜喜 准准教教授授 地理的な位置に関する情報(とそれに関連付けられた情報)を空空間間情情報報と呼び、それらを収集、管理、加工、分析、表示する空間情報技術を開発しています。そして、現実の社会や都市における、様々なシステムが複雑に絡み合っている問題を、空間情報技術を活用して解決することを目指しています。具体的な研究テーマとして、鉄道・船舶・航空などの交交通通シシスステテムムとそれと密接な関係を持つ都都市市・・地地域域・・環環境境の諸問題を取り上げ、それらを解決するための数理的手法、並びに実践的手法に関して研究を行っています。 ■■ 時時空空間間ネネッットトワワーーククモモデデルルをを用用いいたた交交通通シシスステテムムのの分分析析 時刻表が定められているような交通機関に対して、空間的な移動と時間の経過を同時に表現する時空間ネットワークモデルを用いると、時間に依存するような問題を単純な静的な問題に帰着させることができます。例えば、鉄道路線上を通勤・通学客が移動することを扱うためには、時々刻々と変化する乗客を表現しなければならず、これは大変難しい問題です。そこで、乗客は出発・到着時刻が定められた電車に乗って移動することに着目し、電車一本一本を予めネットワーク化しておくことによって、単純な経路選択問題として取り扱うことにします。この手法は、ネットワークの規模が大きくなるものの、扱いが容易であるという特長があります。 この手法を首都圏の鉄道に用いると、「「首首都都直直下下地地震震にによよるる鉄鉄道道利利用用通通勤勤・・通通学学客客のの被被害害想想定定」」を行うことができます。時空間ネットワークモデルでは、各時刻における走行中の電車の位置、速度、乗車人数がわかります。ここに中央防災会議で予測された地震の震度分布を重ね合わせ、震度ごとの鉄道の被害想定を仮定することで、鉄道利用者の被害を推計します。このような推計を行うことで、帰宅困難者や負傷者の人数だけでなく、その地理的分布も把握することができます。 また、この手法は船舶にも適用することができます。例えば、世界中のコンテナ船などを対象とすれば、現在の海上物流を表すことできます。さらに、地球温暖化の影響により将来実用化が見込まれる「「北北極極海海航航路路のの可可能能性性」」に関して、その影響をシミュレーションすることもできます。北極海航路を利用できると、東アジアとヨーロッパ、アメリカ東海岸などを結ぶ航路において、航海距離を短縮することができます。船舶の燃料消費量は速度の3乗に比例するので、減速航海すれば燃料消費量を約40%~50%削減できる可能性があることがわかりました。 同様に、航空旅客便に対してこの手法を適用すれば、「「航航空空旅旅客客便便のの運運航航状状況況をを表表すすアアニニメメーーシショョンン」」なども作成することができます。当研究室で作成したアニメーションのデータは東京・お台場にある「「日日本本科科学学未未来来館館」」に設置されている直径6mの球体ディスプレイGeo-Cosmosでも上映されています(プログラム「軌跡~The Movements」)。 ■■ 都都市市ののオオペペレレーーシショョンンズズ・・リリササーーチチ((都都市市ののOORR)) 題に着目した際の生鮮食料品店の評価方法を提案しています。 現代の都市は様々な問題を抱えています。一例を挙げれば、待機児童の問題、医療・介護施設の有効活用、大規模災害時の給水拠点の確保、電気自動車の充電ステーションの配置、フードデザート問題などがあります。最後に挙げた「「フフーードドデデザザーートト問問題題」」とは、近年、郊外地域のみならず都心部においても満足に買い物に行けず、日々の生鮮食料品を確保することに苦労している買い物弱者が増えているという問題です。本研究では、福岡市を対象として、高齢者の居住地から生鮮食料品店までの道路距離によってフードデザート地域を定め、フードデザート問題をこれ以上悪化させないようにするために必要となる生鮮食料品店の最小店舗数ならびにその立地を、集合被覆問題に帰着させることで求めています。さらに、フードデザート問メインデータ科学、統計、空間情報関連都市設計、防災、都市デザイン/自然環境とエネルギー情情報報工工学学科科 90数理モデルとビッグデータで都市の問題を見える化する! 空間情報技術研究室情報工学科鳥海 重喜准教授

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