■研究概要私たちは、スマートフォンやパソコンなど便利なモノに囲まれて生活しています。その中には、液晶パネル、磁気デバイス、半導体素子など、様々な機能性材料が使われています。皆さんはテレビがブラウン管だった時代をご存じでしょうか?すべての人がブラウン管テレビの進化にこだわっていては、薄型テレビやスマートフォンは誕生しなかったことでしょう。今は実現困難なことでも、それまでの常識を覆すような新現象や機能性材料が発見されれば不可能を可能に変えることができるかもしれません。こうしたイノベーションを起こすためには、新たな知の発見を目指す裾野の広い基礎研究こそが大切です。その一環として、私たちの研究室では-273℃という極低温環境で物質が示す特異な性質に注目し、研究を進めています。 私たちの身のまわりの物質には1023個もの電子が備わっており、それらが複雑に相互作用して多彩な現象が発現します。特に、絶対零度(摂氏-273.15℃)近傍の極低温度領域では、電子の熱によるランダムな運動が抑えられ、量子力学で勉強する不確定性原理に起因したゆらぎの効果が支配的となります。この「量子ゆらぎ」が、数々のエキゾチックな物理現象を引き起こすと考えられています。その代表例が、将来のエネルギー革命を期待させる「超伝導」です。他にも極低温では、異常な金属状態や新しい磁石の性質など従来の常識を打ち破る可能性を秘めた数多くの新奇現象が潜んでいると期待されます。私たちは精密物性測定から極低温状態の物質中で起こる非自明な現象を観測し、その普遍的性質を明らかにすることを目指しています。 メイン物性関連低温/その他(超伝導)14-273℃の極低温度領域において磁場方位を3次元空間で自由に制御できる装置(左写真)。自作したオリジナルの熱量計や膨張計(右写真)を取り付けて精密物性測定を行っている。 極限凝縮系 物性研究室従来の常識を打ち破る新奇現象を極限環境での精密物性測定から切り拓く物理学科橘高 俊一郎准教授
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