31HIRANO Susumu国際情報学部長 平野 晋 〈情報社会=Society4.0〉の次に来る社会が〈Society5.0〉である、と政府は宣言しています。〈Society5.0〉では、仮空世界と現実世界が結びついて、経済発展と社会問題解決双方の達成が目指されています。そこでは、収集されたビッグデータが人工知能(AI)によって分析されて、ロボットや人事採用等の商品や役務に利活用されます。しかし、情報の無秩序な収集・利活用を許せば、プライバシーが保護されません。AIが下した判断にヒトが服従させられるような、ディストピアを懸念する声も聞かれます。 メタバースも、良いことづくめではありません。AR(拡張現実)やVR(仮想現実)等の高度な技術を用いた仮想世界内で、現実世界における自分よりも機能が拡張されたアバターを通じて、他のアバター達とのインタラクション(相互作用)を享受できるメタバースは、現実感、没入感、及び執着心等の多大な心理的影響を利用者に与えます。そのため例えば、他のアバターから暴行を受けたアバターの利用者は、非常に大きな精神的ダメージを受けるけれども、法整備は不十分という指摘もあります。仮想土地や仮想グッズの取引がトラブルになった場合にも、今の法制度では十分に救済されないおそれもあります。 つまり理想的な〈Society5.0〉の達成や、メタバースの広い普及に至る迄には、解決されるべき課題も多く存在します。そして課題解決のためには、AIやメタバースの仕組みを理解しなければなりませんが、それだけでは不十分です。仕組みを改善しても治らない欠点を抑え込むためには、法律などのルールによって規制する必要性も出てきますから、法律の知識も必要になるのです。 幸い皆さんは、〈IT:情報の仕組み〉と〈L:法学〉の双方を、私たちが知る限り唯一無二のiTLで学ぶことによって、課題解決の能力を修得できます。加えて〈情報の国際文化〉も身に着ければ、AIやメタバースに続いて必ず現れるであろう更なる新興技術が世界を変革させても、時代の変化に対応できる普遍的な考え方を身に着けることもできます。是非ともiTLの教育研究を通じて、様々な新興技術が生む課題を治癒できる有為な人材に育ってください。学部長挨拶AIやメタバースの諸課題を解決できる能力を修得せよ!
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