の研究力49コンピュータの数値計算プログラムを用いて詳細な計算を行います。ブラックホールの理論を応用して物質の電気伝導度の振る舞いを計算した計算結果の例○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○。Check素粒子を「点」ではなく「ひも」として捉える「超弦理論(超ひも理論)」 私の専門分野は素粒子物理学です。素粒子とは、原子や原子核よりもっと小さい、物質の最小単位のこと。素粒子物理学では、素粒子同士がぶつかったらどうなるか、二つ並べて置いたらどんな引力が働くかなど、素粒子の性質について考えます。私は、素粒子を「点」ではなく長さのある「ひも」として捉える「超弦理論(超ひも理論)」を研究しています。超弦理論を応用すると、別の分野の物理学的課題を解決できることがあります。例えばコップ1杯の水を10℃温めたらどれくらい膨張するかを考えるとき、理科の授業では、動きのない平衡状態を用いて考えますね。実際のところ、私たちの身の回りには、動きのない「平衡系」の環境はほとんど存在しないのですが、水を一部だけを温めたり、かき混ぜたりといった動きのある「非平衡系」の物理(非平衡統計物理学)はとても難しく理論が完成していないため、動きが緩やかな場合に単純化して考えるわけです。ところが、水のような流体をブラックホールに置き換えてみると、非平衡系で何が起こるかを考えられる可能性があります。つまり、流体を一度ブラックホールに置き換えてから、アインシュタインの理論を使って計算し、それをまた流体に置き換えるのです。このように、ブラックホールの理論を用いて他の物理現象を理解するには、素粒子物理学や超弦理論の知識が欠かせません。そのため私は素粒子物理学の知見を活かし、ブラックホールの理論を非平衡統計物理学などに応用する「AdS/CFT対応」について研究しています。器具を使わず、数式だけで物理を説明できる理論物理学 さて、物理学は大きく分けると、理屈を考える理論物理学と、実験装置を使っていろいろなものを測定する実験物理学があり、私は理論系に属しています。実は、もともと大学院では実験物理学を研究していたのですが、自分が本当にやりたい物理学とは何かを見つめ直した結果、28歳で理論系に転身しました。物理の理論について考えていると、ふと「この数式を入れるとうまくいくぞ」と発見する瞬間があります。世界にいる何億もの人間のなかで、その瞬間、その真実をわかっているのは自分だけ。それは何にも代えがたい喜びです。物理学科の詳しい研究内容はこちらから上の研究室があり、教授陣は日夜、研究・教育活動を行っています。走る研究内容をご紹介します。素粒子物理学科中村 真 教授素粒子理論研究室素粒子物理学とブラックホールの理論を駆使して物理学に挑む未知なる「非平衡系」の
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